探偵ガリレオがこんなところにも

physics

今日お昼に本屋で見かけた「数理科学」、まあその手の人にとっては有名な雑誌ですが、今月の特集のタイトルが

「現代数学はいかに使われているのか(幾何学編)」

だったので、迷わずに買ってしまいました。理論物理をかじったことがあるとどうしても幾何学ネタには食いついてしまいます。(実際最近それっぽい日記書いてますし)

大栗さんの文章はほんとに無駄がなく、わかりやすくてさすがだなと、実は内容は超高度なんですが、そう思い込んでしまうのは、とてつもない文才にであることに間違いないと思います。ooguri, vafaとかこの辺の人たちの論文を見て、「ああ、自分には到底無理だ」と、ある意味物理をやめたきっかけにもなった人なので、いまだに気になる人たちです。この人の関心は非常に面白い。トポロジカル弦理論の日本語の解説も結構書いているみたいなんで、ぜひ読んでみたいです。やっぱりブラックホールとかエントロピーとか言われるとついつい食いついてしまうんです。

さてさて、この特集は何も物理だけじゃなくっていろいろな分野にまたがってたりします。一番面白いなあと思ったのは、高分子化学、ソフトマター、DNAの構造などに対するトポロジーの応用の話。これは生物物理という分野にも関係があって、非常に楽しそうな話題。こちらの解説記事も限られた量にしてはかなり丁寧できちんとしていて、素人の僕でもわかりやすかったです。中でも「トポロジー的相互作用」という理論的に導かれる力が、実験の結果にもよく対応しているということみたいですから、ちょっとまじめに勉強したくなります。生物は、一番勉強しなかった科目ですから、いまだに公開しています。

それにしても、トポロジーによる制約が(エントロピー的な)相互作用を生みだす、そんなものが、高分子の世界、有機化学の世界でも存在するとは。現代の物理、ゲージ理論(もう現代じゃないか?においても、厳密に言うとちょっと不正確だけど、端的にいえばこうした幾何学的な要請から相互作用が決まってしまいますからね。こういう考え方というのは、間違いなく普遍的なサイエンスの概念なんでしょう。

ちなみにトポロジー制約 ⇒ エントロピー的相互作用、といわれてピンとくる人はそうそういないと思います。実ははじめ「文章」で読んだときには??でしたが、解説文に書いてある「式」を見ると、「ああ、なるほど」と思えるわけです。これは、学生時代に時には苦しくもおおむね楽しみながら物理を勉強したおかげだと思います。トポロジーなこと、ここれは結び目理論の話なのですが、この辺は、正直わからないことが多い。だけど、何らかの「トポロジー」を物質や状態の「配位」にみなせると、そっから先はもう機械的に物理の知識だけで理解できるようになります。とりあえず配位や確率分布が現れたら、適当にログとって、そのあと長さの次元持つ量で微分しておけば「力」になりますからね。今回の話もまったくそのとおり。

ボルツマンって人は、やっぱり凄いね。

そして、このセクションの最後の方ではDNAへの応用 → 生物・医学への応用、なんて書いてあります。将来トポロジーの話から薬か何かが生まれたのならば、ほんと夢のような話ですね。さすがにそれは遠い未来かもしれないけど、少なくとも現時点で生物の分野にさえももう進出してきていることには間違いないわけですね、幾何学が。

最後に、ネットワークの話もありました。このセクションはあまりよくわからなかったのですが、どうも「グラフ理論」というものの話をしているようです。でも、このセクション、実は一番面白かったかもしれません。

なんと、これを書いた方は昨年公開された人気シリーズ「探偵ガリレオ」の映画版「容疑者Xの献身」の容疑者役石神のモデルになったひと、モデルというか数学的な監修をした方だったんです。劇中に「四色問題」の話が出てくるのですが、その話題について監修したとのこと。劇中に出てくる石神のノートの中身も作られたそうです。

映画を見ててもよくわからなかった「4色問題」、ようやくなんのことかわかりました。たしかあの映画の中ではミレニアム問題のひとつ「Yang-Mills問題」も会話の中で出てきたような気がしますが、どうだったのか。ちなみにこの話題は前述の大栗さんの記事の中でちょこっと紹介されています。

そんなわけで、久しぶりの数理科学、楽しませてもらいました。

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